大爆死!?2022年の覇権を取るはずだったチェンソーマン、賛否両論の理由とは?
2022年10月から放送された、アニメ「チェンソーマン」。
原作は、週刊少年ジャンプ(現在はアプリ版ジャンププラス)で奇才と言われる藤本タツキ先生が描く漫画です。
2,300万部超えの大ヒット漫画ですが、少年誌らしからぬグロテスクな表現もあり映像化は難しいのではないかとも言われていました。そのため、アニメ化が発表された時には「待っていた!」「良くやった!」と国内外から称賛の声が上がり、多くの期待が寄せられました。
製作会社は「呪術廻戦」「進撃の巨人」を手掛けたMAPPAが担当し、MAPPAの社運を懸けた作品とされていました。その理由は通常アニメやドラマなどが採用する複数の企業に出資してもらう製作委員会方式ではなく、MAPPAと集英社のみの単独出資方式でこのアニメを作ったからです。製作費のほとんどを賄うためリスクはありますが、関わる組織が少ない分1枚岩で、ハイクオリティな作品になります。
この方式は、ジャンプ作品で大ブームとなった「鬼滅の刃」で同様の方式で、鬼滅の刃では莫大な利益を生みました。「NEXT鬼滅の刃」としての期待、そして間違いなく2022年を代表するアニメになると思われたチェンソーマン。
しかし、放送終了後、視聴者からの反応は予想と反するものになりました。
目次
チェンソーマン放送前や終了後の反響
TwitterやYouTubeでの反応
チェンソーマン放映後、Twitterや掲示板では批判のコメントの嵐。特に演出やテンポの悪さに批判が集まりました。
実際に視聴すると、キャラクターのセリフが遠く聞こえるようで、ボソボソ話しているように感じる部分がありました。物語も淡々と進行するため、セリフ量も少なめでBGMだけの映像が続くなど展開が間延びした印象が強かったです。
また、1つの指標となるのがアニメの残留率です。
残留率とは、1話目を100%とした時に2話目以降がどの程度上下したかを示す率のこと。チェンソーマンは残留率67.9%で、3割以上の視聴者が離れていったことを示しています。これは同時期のアニメの中で19位という結果です。(残留率1位は「ぼっち・ざ・ろっく!」の203.3%)
しかし一方で、YouTubeではアニメ放送前からPVやOPの映像で再生回数はトップクラス。アニメ放送中も戦闘シーンのまとめ映像も再生回数は伸び、「神作画!」と作画に対するコメントは絶賛が多くありました。
不安視されていたチェンソーマンの特徴であるバトルシーンのグロイ演出も、原作並みどころかやりすぎなくらい再現しており、見応え充分と評判でした。
円盤の売れ行きとサブスクのランキング
チェンソーマンのアニメが「失敗」したと言われる最大の要因は、アニメ成功の指標とも言われる円盤の売れ行きです。
チェンソーマンの円盤の初動の売れ行きはおよそ2,000枚でした。円盤の損益分岐点は一般に5,000枚といわれているため、数字上では赤字であることを示しています。このためネットでは「爆死」と表現されています。
しかし、動画配信サイト(サブスク)のランキングでは上位にランクインしていて、放送終了後も注目され続けていました。グッズ展開やイベント、原作コミックスの売上も順調です。また、2023年5月にはチェンソーマンフェスの開催も決まっています。
賛否両論ともいえるようなこの結果がなぜ起こってしまったのか。
一言で表すと、「ライト層の獲得には成功したが、コアな原作ファンのウケが悪かった」ということです。
次項ではアニメの見所、ポイントを交えて解説していきたいと思います。
チェンソーマンはどんな作品?あらすじを紹介!
チェンソーマンは、父親の借金返済のためにヤクザから斡旋されたデビルハンターの仕事をこなしながら極貧生活を送っていた少年、デンジが主人公です。
デンジが背負う借金は莫大で、腎臓を売り、右目を売り、金玉を片方売り…さらにデビルハンターとしての収入も借金の返済として持っていかれ…幼少期から一緒にいた子犬のような風貌をしたチェンソーの悪魔であるポチタと共に、食パンしか食べることの出来ない生活を送っていました。
彼はただ「普通の生活がしたい」と望んでいるだけでしたが、その願いすら叶わず、悪魔の力を望んだがために悪魔に騙され、ゾンビ化してしまったヤクザたちに殺されてしまいます。死ぬ直前にポチタと契約したデンジは、ポチタの心臓を譲り受け、チェンソーの悪魔としての力を手に入れ復活し、ゾンビたちを悪魔の力で撃退します。悪魔の噂を聞きつけ駆け付けた「公安対魔特異4課」のマキマという女性に拾われたデンジは、公安でデビルハンターとして働くことになります。
悪魔の力を使って悪魔を倒す、よくあるダークヒーローものとして、デンジの戦いが繰り広げられる作品なのですが、独特の世界観と主要キャラが平気で次のページであっけなく死んでいる展開の読めなさが魅力的な作品で、若者から絶大な人気を誇っています。
また、主人公のデンジのキャラクターも現代風で人気の一因となっています。彼が戦う理由は敵に家族を奪われたから、仲間を守るためといったものでなく、「女の胸を揉みたいから」という不純な理由。悪魔と人間のどちらに味方するかと問われた時には自分の面倒を見てくれるほう、と迷わず答えます。
これまでのジャンプ作品の特徴、「友情・努力・勝利」とはかけ離れた欲望に忠実なデンジのキャラクターは、今の若者に支持されていて、ジャンプ作品に求められる主人公像が変わっていることを示しています。
実写映画のようなアニメ作品を作りたい、監督の思いが詰まったシーンを紹介!
チェンソーマンは、原作者の藤本タツキ先生が映画好きなこともあって、色々な映画のパロディを描いています。
モノローグが少なく常に埃が舞う描写や、風が吹いて常に空気が流れているような雰囲気を出していて、「映画的な表現」というものが多い作品です。
その特徴を活かし、アニメの監督である中山竜監督はインタビューでこう語っています。
「実写的な画面をつくっていきたい。デフォルメを減らし、安易に“アニメっぽさ”にいかないで、映像としてどう見せたいかに重きを置いていきたい」
こうしたこだわりが見えたシーンをいくつか紹介していきましょう。
3話 コウモリの悪魔との戦闘シーンの【漫画との大きな違い】
デンジがコウモリの悪魔と戦闘するシーンは、漫画では静止画の連続で読者の想像で戦闘シーンを補完する作りになっている一方、アニメでは動きの激しいアクションとカメラワークによってより臨場感がある戦闘シーンを作り出しています。
このシーンでもアニメにありがちな戦闘中のキャラクターのモノローグなどはなく、純粋な戦闘を繰り広げる作りになっています。
4話 アニメオリジナルシーン【早川アキのモーニングルーティンを2分ほど流す】
アキの自宅での朝の風景が描かれるシーン。朝7時に起きて顔を洗って歯を磨く。ベランダに出向いてタバコを吸いながらコーヒーを飲んで、新聞を読む。洗濯をし、掃除機をかけ、食事を作る。
アキがいかにまっとうな人物であるかを一切のセリフなしに淡々と流しました。
このシーンは原作にはないシーンでアニメオリジナルですが、ともすれば冗長的とも言えるこの演出は漫画では出来ない表現です。
アニメ映像だからこそ出来る、早川アキというキャラクターがどんな人物であるかを、特別な演出でない日常的なシーンで見せたことでキャラの個性を表現していました。
7話 閉鎖空間での無限に増殖する悪魔との【独特な演出の戦闘シーン】
悪魔によってホテルの閉鎖空間に閉じ込められてしまい、助かりたければデンジを差し出せという悪魔に対して、デンジが自ら悪魔の元に向かって戦い続けるシーンがあります。
血が足りなくなるとチェンソーマンに変身できないデンジはダメージを負いピンチになりますが、相手の悪魔を切り刻んでその血を飲むことで永遠に攻撃し続けます。
このシーンは、アキたちの視線から悪魔と戦うデンジを遠くから見つめるようなカットになっていて、遠いところからデンジと悪魔の声が聞こえる演出になっています。
聞き取りづらいと感じるほどの声量での引きの映像は、邦画で定番の演出です。
悪魔の力をもつデンジの特異性と、公安の仲間たち人間の絶対的な距離を映像で演出していて、監督の映画的な表現に対するこだわりも感じられるシーンです。
MAPPAらしい迫力ある戦闘シーン
製作会社のMAPPAは派手な戦闘シーンの作画に定評がある会社です。このチェンソーマンでも戦闘シーンの素晴らしさは健在でした。
戦闘シーンで特に素晴らしかったのは第8話・第9話のデンジとサムライソードの戦闘シーンです。3Dを多用した作画は迫力満点で見応え満載でした。
サムライソードがデンジを真っ二つに切り裂いたシーンでは、前面に映るサムライソードにピントを合わせ、後ろには斬られたことに気づかないデンジを映し続けていました。
漫画ではたったの1コマで描かれたこのシーンは、互角かに見えていたデンジとサムライソードがこのあっさりやられたシーンを長く描いたことで実力差が浮き彫りになったような演出になっていました。
全12曲のエンディング!?異例の超豪華な楽曲の数々!
アニメチェンソーマンは、全12話のエンディング楽曲は週替わりで、毎回違うアーティスト・違うエンディング映像であることがアニメ放送前に発表され、その点も大きな注目を浴びました。
過去のアニメ作品でも声優が歌うキャラソンを使用してエンディング楽曲を数話ごとに変えたりといった例はありましたが、1話ごとに別々のアーティストが主題歌を担当しそれぞれ違うエンディング映像を作成するというのは異例の試みでした。
この試みには監督のこだわりが詰まっていて、「この話は特殊エンディングを使いたい、この話も、この話も…いっそ全て違うエンディングにしたら面白いのでは?」と脚本担当との会話で思いついて、実現させたのでした。
音楽まで含めて1話ごとの1つの作品、これまでの1クールアニメの常識を覆す試みといえるでしょう。
- OP 米津玄師『KICK BACK』
- 第1話ED Vaundy『CHAINSAW BLOOD』
- 第2話ED ずっと真夜中でいいのに。『残機』
- 第3話ED マキシマム ザ ホルモン『刃渡り2億センチ』
- 第4話ED TOOBOE『錠剤』
- 第5話ED syudou『インザバックルーム』
- 第6話ED Kanari『『大脳的なランデブー』
- 第7話ED ano『ちゅ、多様性。』
- 第8話ED TK from 凛として時雨『first death』
- 第9話ED Aimer『Deep down』
- 第10話ED PEOPLE 1『DOGLAND』
- 第11話ED 女王蜂『バイオレンス』
- 第12話ED Eve『ファイトソング』
OP 米津玄師『KICK BACK』
米津玄師さんが歌う「KICK BACK」は作詞・作曲も米津さんが担当していますが、共同編曲として4人組のバンド・King Gnuのギター&ボーカルの常田大希(つねた だいき)さんが参加しています。
チェンソーマンの世界観を完璧に表現していると絶賛された楽曲はPVも米津ワールド全開の作りになっていて話題になりました。また、モーニング娘。の楽曲「そうだ!We’re ALIVE」のフレーズの一部が使用されていることが明かされています。
米津さんはチェンソーマンのオープニング主題歌を担当することについて「とにかく原作が好きだったので光栄です」とコメントし自身も作品のファンであり、だからこその解像度と納得できる作りでした。
第3話ED マキシマム ザ ホルモン『刃渡り2億センチ』
この曲は劇中歌としても使用されています。
ロックな曲調で、チェンソーマンの熱いバトルシーンを彩ってくれる楽曲になっていて12曲あるED楽曲の中でも特に評価が高い曲です。
第7話ED ano『ちゅ、多様性。』
anoさんは2013年にアイドルグループとしてデビューし、2019年に脱退してからはアーティスト活動、タレント活動に俳優活動にマルチに活躍しています。あのちゃんの愛称で親しまれており、こちらの名前の方がピンとくる方もいるでしょう。
第7話はデンジと姫野のゲロちゅー事件が描かれた回で、この曲も含めて色々な意味で話題になりました。
聴いたことがない人はぜひ一度聴いてみることをオススメします。
第9話ED Aimer『Deep down』
様々なアニメ楽曲や挿入歌を担当しているAimer(エメ)さんが満を持してこの9話のEDを担当しています。
代表曲となった「鬼滅の刃 遊郭編」のOP曲「残響散歌」のMVは、YouTubeで1億2000万回以上再生される大ヒット曲になりました。
2022年の紅白歌合戦にも初出場を果たしています。
第12話ED Eve『ファイトソング』
アニメの締めくくりとなる12話のEDを担当したのはEve(イブ)さんでした。
呪術廻線のOP曲「廻廻奇譚」で一躍知名度をあげ、その後「ジョゼと虎と魚たち」「バブル」などのアニメ映画の主題歌を数多く担当しています。
まとめ|アニメとしては満足の出来!だが原作ファンの支持を得られず。2期はどうなる?
演出、映像、音楽など様々な角度からアニメ「チェンソーマン」のこだわりを解説してきました。
筆者も視聴しましたが、キャラクターがボソボソと話していて聞き取り辛い場面や、展開の勢いが少なくダレてしまう感覚はありました。
しかし、映像や楽曲など素晴らしい面もあり、アニメとしては満足いく出来だったと思います。原作を知らないライト層としては、綺麗に1クールでまとまって観やすい作品でした。
チェンソーマンは、原作の特徴としてよく言われるのが、勢いで読む漫画であることです。独特な絵柄にグロテスクな表現に敬遠されがちながら、一度読むと予想外の展開にハラハラドキドキしながら一気読みすることで作品にのめり込んでいきます。
対してアニメは写実的な演出にこだわり、その勢いはあえて無くし緊迫感のあるシーンも淡々と映像を流す、漫画とは逆のやり方をとりました。
この新しい演出への挑戦には称賛を挙げる人も多かったですが、チェンソーマンに求めている作風ではないと原作ファンからの批判が集まってしまったのでした。
爆死といわれる最大の要因である円盤の売上も、今は配信主流の時代で、円盤の売上が全てではありません。円盤は特典目当てに買う層も多く、またジャンプ作品は近年配信に力を入れており、円盤の売上は伸び悩む傾向にあります。
集英社とMAPPAの単独出資でのこの結果は、相当な痛手ですが、ジャンプの看板作品ともいえるチェンソーマンで、このまま終わるわけにもいかないでしょう。
12話の最後のカットでは原作で重要な立ち位置であるレゼが登場しており、続編を匂わせていました。
製作陣、製作方式の変更などテコ入れの可能性はありますが、続編制作の可能性は高いでしょう。
最近のジャンプのアニメ作品の傾向として、1期放送後に劇場アニメという流れがあります。「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」同様、レゼ編を劇場版として公開する可能性も考えられます。
レゼ編は原作でも屈指の人気エピソードでもありますので、ここでの巻き返しに期待したいと思います。今後のチェンソーマンの情報解禁に要注目です!
チェンソーマンの基本情報・主な配信サイト
作品名 | チェンソーマン |
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ジャンル | バトル |
放送形態 | TVアニメ |
放映時期 | 2022年10月~12月 |
アニメーション制作会社 | MAPPA |
キャスト |
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主なスタッフ |
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「チェンソーマン」の主な配信サイトをチェック!
配信サイト名 | 配信状況 | 配信リンク・特典 |
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