「明日ちゃんのセーラー服」から見るフェチシズムへの正しい触れ方と楽しみ方

「明日ちゃんのセーラー服」は2022年冬アニメとして放映されているアニメです。

タイトルや作画を見れば「萌えアニメ」の1つであることは容易に想像できますが、オーソドックスな萌えアニメとは異なり、よりフェチを追求した作品となっています。

今回の記事では「明日ちゃんのセーラー服」のとあるフェチシズムを紐解きつつ、その精神的なアプローチ方法を探っていきたいと思います。

「明日ちゃんのセーラー服」の概要

舞台は、田舎の名門女子中学・私立蠟梅ろうばい学園。
あるきっかけから、この学園のセーラー服を着ることが「夢」だった少女、明日あけび小路こみち
念願叶い、ドキドキで入学式当日を迎えるが―

「私はセーラー服に決めました」

決意を胸に、夢の中学生ライフが始まる♪

「明日ちゃんのセーラー服」公式サイトより一部引用)

公式サイトにある概要は上記の通りです。

もう少しわかりやすく言うと、「母親に作ってもらったセーラー服を着て憧れの女子校に登校したら、いつの間にか学校指定の制服がブレザーに変わっていたが、特例で一人だけセーラー服で過ごすことになった女子中学生の物語」という感じになっています。

タイトルや上記の概要からもわかる通り、このアニメは「セーラー服へのフェチシズム」が全面に散りばめられた所謂フェチアニメです。多くのJCキャラが登場する中、主人公たった一人だけがセーラー服を着ており、セーラー服の存在感と特別感がより際立つようになっているセーラー服マニアご用達アニメと言えるでしょう。

何故人はそれほどまでにセーラー服に惹かれるのか。この作品が成立しているのはセーラー服というものが持つ唯一無二の不思議な魅力ゆえと言っても過言ではありません。それほどまでにセーラー服とは特別なものであり、多くの人をドキドキさせる衣服の1つであるということです。

セーラー服とは何か

「明日ちゃんのセーラー服」の作品内で描かれるセーラー服の魅力をお伝えする前に、セーラー服というもの自体の歴史から簡単にご紹介しましょう。

セーラー服の歴史(はじまり)

セーラー服は、19世紀前半にイギリス海軍で水夫の甲板衣として誕生したのが始まりです。当初は正式な制服ではなく、イギリス海軍の制服として採用されたのは1857年のことでした。

海軍の制服として正式採用される前、当時のイギリス女王が子供服として作ったセーラー服を息子に着せたのをきっかけにして上流階級の子供服として流行し、一般へ広がるきっかけとなりました。

そしてイギリス海軍での正式採用後、各国の海軍でもセーラー服の採用が広がると同時に、20世紀初頭にかけては子供服としてのブームも世界各国に広がっていきます。

セーラー服が水兵の服として作られた理由

セーラー服はその大きな襟(セーラーカラー)が最も特徴的ですが、その襟を立てることで航海中でも指令や会話を聞きやすくするためにその形状となったというのは多くの人が知っている有名な話です。

それ以外には海に転落した時に掴みやすくするためといった説もあり、いずれにしても水兵が航海中の活動をしやすくするために開発されたのがセーラー服の当初の役割でありました。

セーラー服の歴史(日本での広がり)

セーラー服が日本の学校現場に初めて導入されたのは1905年のことで、当時は体操服としての導入でした。通学用の制服としては1920年に京都でセーラー服が採用されたのが最初で、主にキリスト教系の女学校を中心に広まっていきます。

当時は丈の長いセーラー服が主流でしたが、1930年代には高等女学校でも一般的なものとなり、現在とほぼ同じ形状になりました。戦時中に一度セーラー服が全国から姿を消しますが、終戦後には再びセーラー服が女子学校の制服として復活し、現在で言う中学校・高校の多くでセーラー服が採用されるようになります。

セーラー服の歴史(現代)

セーラー服は長く中学・高校における女子生徒の制服として普及しましたが、1980年代半ばごろにブレザーが登場すると、高校においては一気にブレザーへの置き換えが進みました。旧式のイメージが付き始めていたセーラー服から新しいブレザーへの変更は受験者数の確保を目指す高校において特に顕著だったものの、義務教育となる中学校(特に公立)では引き続きセーラー服が広く採用されており、現代でもセーラー服を着た女子生徒を街中で見かけることは珍しくありません。

 

以上がセーラー服の簡単な歴史です。

水兵の活動に適した衣服として開発されたセーラー服ですが、その形状が「かわいいもの」として認識され子どもや女性の一般的な衣服としても広まっていったのが大きなポイントです。それこそがセーラー服の本質でもあり原点でもあると言えるでしょう。

つまり、現代の女子中学生や女子高生が着ているからかわいいのではなく、「セーラー服の形状そのものがかわいい」からこそ100年以上もの歴史を現代においても紡ぎ続けてきたのです。セーラー服へのフェチシズムとは、決して性的な動機ではない、時代や国境を超えた普遍的な憧れであり魅力でもあるのです。

※参考資料:「女子中・高生の制服攻略本」

 

フェチはいやらしいものであるという固定観念を否定する

そこには普遍的なかわいさがあり、かわいいものを着たいという女の子のごく一般的な感情において憧れの対象にもなるのがセーラー服の存在理由の一つとも言えるでしょう。また、未知なるものへの好奇心を抱きがちな男子諸君においては「あんなにかわいいセーラー服はどういう構造になっているのか」「あんなにかわいいセーラー服はどのように着るのか」という、夜空の星々を眺めながら宇宙の果てを思うロマンチックな感情にも似たドキドキとワクワクを抱くことでしょう。

そこにあるのは性的欲求などではなく、ある種の知的好奇心が原動力になっているとも言えます。「明日ちゃんのセーラー服」はそんな純粋(?)なドキドキワクワクをじっくりと見せてくれる、今までになかったアニメとなっているのです。

 

第1話の着替えシーン

さて、そんなセーラー服への好奇心を満たしてくれる素晴らしいシーンを第1話から見ることができます。母親に作ってもらったセーラー服に主人公の明日小路が初めて袖を通すシーンです。ここでは恐らくアニメ史上初と言っても良い「セーラー服を着る瞬間をじっくりと見せてくれる」場面となっています。

その場面を一部ご紹介しましょう。

セーラー服を頭から被り…
着ている途中のセーラー服の形状が確認できる貴重なシーン
セーラー服の中に入った髪をすくい上げる
セーラーカラーの下にスカーフを巻く

いかがでしょうか。静止画でもドキドキワクワクは伝わるのではないでしょうか。

およそ1分半の時間を使い、女子中学生がセーラー服を着る瞬間をじっくりと見せてくれます。そこには「女子の着替えシーン」という言葉の響きから本来感じるような「いやらしさ」というものは存在しません。ただひたすらに「セーラー服を着る」という一点の要素のみがフォーカスされ、望遠鏡で遥か遠い惑星をただ覗くように、その事象を観測することだけが許されている状態に陥ります。

このシーンを見るだけでも「フェチ=いやらしさではない」ことが理解できるでしょう。中学生の女の子が憧れのセーラー服を着るというある種神秘的な瞬間に不純物など持ち込むべきではありません。

ちなみに、このシーンではスカートを履く、セーラー服を着る、ソックスを履く、鏡で確認するまでが一連の流れとなっています。気になる方は是非実際にアニメを見てください。セーラー服にフェチシズムを感じる方なら必ず満足できるはずです。

女子中学生である理由

主人公の明日小路は中学1年生です。高校よりも中学校の方がセーラー服の採用率が高いこともありますが、舞台を中学校にした理由が原作者の口から語られています。

中学生が一番いろんなことを経験して知る年代だったというのが一番の決め手ですね。高校生だと絶対に恋愛が絡むというイメージがありましたし、女子校を描きたいなとは思っていたので、より普遍的な内容を描くのであれば設定は中学生が良いなと思いました。(中略)今の『明日ちゃん』の雰囲気を高校生で描くと、世間知らずの不思議ちゃんにしか映らなかったと思うので変えてよかったです。
(「博イラスト集~明日ちゃんまでの足跡~」より引用)

中学生という設定に含まれる大事な要素は、まだ多くを知らない純粋さと普遍的な物事にすら憧れや感動を抱く素直さにあります。もし明日小路というキャラクターが大人への階段を歩み始める過程にある(ある種の生々しさを持つ)高校生でれば、セーラー服を着る瞬間に感じるフェチシズムからいやらしさを排除することは叶わなかったでしょう。

結局のところ、フェチシズムはいやらしさが無くても成立するのです。上辺だけを切り取ってこのアニメに「いやらしいもの」というレッテルを貼るのは間違っています。フェチシズムを正しく認識し、正しく楽しむことの大切さをこの作品は教えてくれます。この作品をいやらしい目で見てしまった瞬間、この作品の価値はほとんど失われてしまうでしょう。(なお中学1年生にしては発育が良すぎるキャラが居るのはご愛嬌。)

因みに私がファンである声優の斉藤朱夏さんもこの作品の原作が好きで、今回作中に登場するアイドル・福元幹というキャラクターの声優としてキャスティングもされました。女性でも楽しめる作品であることがいやらしいものでないことの証であると言えるでしょう。

また、「明日ちゃんの~」は風景描写も非常にきれいで、要所要所で描き込みや特殊効果を入れ込んだカットも入り、全体的なクオリティが高くなっています。女子中学生たちの日常が繰り広げられるという性質上、物語のコントラストはさほどありませんが、そこさえ許容できればフェチシズム抜きにしても楽しめる良作と言えます。

いわゆる「美少女の日常アニメ」が好きであれば見る価値があるのではないでしょうか。

更なるフェチを追い求めたければ原作を読むべし

「明日ちゃんのセーラー服」はマンガ原作で、現在9巻まで発売されています。原作は「マンガ」としても少し異質で、キャラクターのポーズのみのカットが多用される、イラスト集にも似た作り方になっています。

しかし原作者の力量が素晴らしく、ある意味ではイラスト集のように楽しむのも正解なのだろうと思わせてくれます。特に私のように趣味や仕事でイラストを描く人にはより楽しめるのではないでしょうか。

女子中学生の何気ない動きや様々なスポーツの一瞬から切り取られた1コマを静止画でじっくりと見せてくれるので、セーラー服以外へのフェチも十分楽しめる作品です。

なお球技大会や東京旅行などの話では盛り上がるシーンもそれなりにあります。かわいいキャラクターのポーズなどを楽しみつつ物語としてもしっかり読めるようになっていておすすめです。セーラー服へのフェチシズムは軸としつつ、アニメとはまた異なる様々な楽しみ方ができるので、興味がある方は是非1巻を読んでみてください。

この記事では「明日ちゃんのセーラー服」の作品画像を比較研究目的のために引用しております。画像の著作権は©博/集英社・「明日ちゃんのセーラー服」製作委員会にあります。

この記事を書いた人
hunny-heaven

アニクラのサイト制作・イラスト制作担当。二次元は大好きだがアニメオタクではない。斉藤朱夏のファンクラブ会員。好きな美少女キャラは渡辺曜(ラブライブサンシャイン)、メグ(幻想水滸伝1・2)、エアリス(FF7)。

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